吉田初三郎の強羅公園絵図
- 杉山洋美 (小堀昌子 / 内田博)
- 8月10日
- 読了時間: 3分
更新日:8月10日

大正3年(1914年)8月に、強羅公園は開園した。2025年現在から111年前に開園した歴史ある国の登録記念物に指定された公園です。公園の設計者は、当時造園の第一人者である一色七五郎であり、噴水池を中心に左右対称な地割り構成が特徴的です。当時の日本では、洋式の建築・庭園が流行していて、建築では東京駅、庭園では明治神宮外苑の一部や新宿御苑の一部というように多くの例がみられますが、箱根強羅公園は完全な形で現存している非常に貴重な公園となっています。強羅公園は、強羅一帯が上流階級の親睦・保養施設として、リゾート開発された中で中心的なものとして登山電車の開通前から開園されました。当初は洋風庭園に隣接して和風庭園が設けられていましたが、和風庭園は第二次世界大戦中に世界救世教に譲渡され、現在は箱根美術館の庭園として残されています。戦後の昭和27年(1957年)に有料公園として一般開放され整備されました。


※上記の絵図は、大正3年から5年の間に初版が刊行され、大正9年に至って「鉄道同志会の講習会」(民鉄協の前身の団体名)が強羅で開催されるのに先立ってこれの用に再販されたものとみられる。この初版に刊行には、益田鈍翁「白雲洞茶苑」はまだなかったようです。
最後に、この絵図には、吉田初三郎のコメントも記載されています。以下に紹介します。
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謹啓
恩師鹿子木猛郎先生のご指導により名所図絵の制作に志しました私はつとに広重の偉風を敬慕して及ばずながら「大正の広重」たらんことを期し広く各地の名所図絵完成に従事するここ多年、常に鉄道省当局及び鉄道同志会、各鉄道軌道会社の援助にまつところ多し、この図はかつて小田原電気鉄道のこうしょくにより初三郎の描きたるものあたかもこの地において今回講習会を開かるる由につききょうていを探り更に複写して各位に呈することとしました。幸いに会場の地形大観等をこの図に依りてヨリ印象し賜うを得ばその幸福は独り筆者の喜びにとどまらず実に天下の絶勝箱根山、否、鉄道同志会講習会の会場として選ばれたる箱根山中の代表的景勝地、強羅公園のために喜ぶのであります。
敬白
大正9年8月
東京市京橋区南伝馬町1丁目6番地 吉田初三郎
電話京橋3305
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この吉田初三郎の箱根強羅公園絵図は、開園当初の和風園の詳細が記載されている貴重なものであります。そのため、ここに記録をしておきたいと思います。

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