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野の花と五百羅漢が遊ぶ寺鈴木太源(すずき たいげん)さん龍虎山長安寺 第26代住職

仙石原にある「曹洞宗龍虎山長安寺」の歴史は古く、延文3(1358)年、南北朝時代に始まる。姥子に建てられていた小さなお堂がその前身と伝えられている。大涌谷は、昔、「大地獄」と称されており、その麓に位置する姥子に地獄山を信仰する人たちによってこのお堂が建てられていたが、老朽化したために江戸時代の明暦元(1655)年に、機山労逸大和尚によって、現在の場所に開山された。以後、地域の心の拠り所として年月を重ねてきた。

そして、現代。新緑や紅葉の美しい参道を進み山門をくぐると、そこに待ち受けるのは表情豊かな石仏たち。さらに本堂裏の林“羅漢山”に足を踏み入れると、五百羅漢たちが、吹き渡る爽やかな風を受けながら、楽しそうに遊んでいる。この風景は、26代現住職・鈴木太源和尚(昭和25・1950年8月10日~)の深い想いによって生まれたものだ。

太源和尚は長安寺で生まれ育った。駒澤大学を卒業後、一年間永平寺に修行に行き、帰郷。そして、厚木市および小田原市の小学校の教諭になった。お寺を継いだのは、父・紹剛(じょうこう)さん他界後の昭和54(1979)年である。重厚な感じの茅葺きだった本堂の屋根は、昭和45(1970)年に銅板にふき替えられ、庫裏も新しく建設されていたが、太源和尚は、長安寺が訪れる人たちにとって、よりよい癒しの場になるようにと、裏山に生い茂っていた竹やぶを切り拓いて、「羅漢山」を作り始めた。

「当初は、小京都のようなイメージを考えていましたが、盆地である京都と起伏のある裏山では地形が違いますから、“箱根ならではの雰囲気”にすることにし、羅漢さんを置くことにしました」。

石仏は、檀家さんだけでなく、希望する人は誰でも施主になることができ、昭和60(1985)年に一体目を置いてから、いまでは256体。これまで14人の彫刻家の手によって彫られたという。佇まいや表情もそれぞれ違う羅漢たちは、酒を酌み交わしたり、談笑したり、天高く衣を翻したり、瞑想にふけったり、思い思いに時を過ごしている。

長安寺の大晦日にも特筆すべきものがある。羅漢山を含め、境内全体が、彫刻家・眞板雅文氏によって演出される幽玄な光と色にあふれ、打ち鳴らされる太鼓、立ち込める香とともに、除夜の鐘が荘厳に響き、長安寺全体が新年を迎えるステ-ジになるのだ。

「檀家さんが大晦日にお墓に初参りにおいでになるので、もともとは足下を照らすために灯籠などを置いていましたが、何か感動して帰っていただきたいと考えて平成2(1990)年頃からこういう形になりました。眞板さんは10年前に亡くなったのですが、彼の演出を現在も受け継いでいます」。

「東国花の寺百ヶ寺」の一つに選ばれている境内には、イワシャジンやシュウメイギクをはじめ、四季折々に華憐な野の花が慎ましく花開くが、太源和尚が、いま育てたいと考えているのは、クマガイソウだとのこと。

「長安寺を、その名の通り、皆さまにとって長く安心してもらえる場所にするために、“祈りと安心”をテーマに庭造りをしています」と語る太源和尚は、祈りあふれる境内にまた新しい安らぎの野の花を添える。

【龍虎山長安寺】

■〒250-0631神奈川県足柄下郡箱根町仙石原82

■電話:0460-84-8187

■アクセス:箱根湯本駅から箱根登山バス(T路線)約23分「仙石」下車すぐ。

小田急箱根高速バス バスタ新宿から120分「仙石」下車すぐ。


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