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豊かな情感で箱根を切り取っていく上野泰明(うえの やすあき)さん   クリエイティブ・ディレクター

♪あなたはいま どの空を見ているの

虹の向こうの 遠い日を見ているの

水平線がゆっくりと ひとつに重なれば

また会えますか 新しい日のなか

透明な女性歌手の歌声とともに、新宿から箱根湯本まで、沿線の街々や田園風景を背景に颯爽と走り抜けていくロマンスカー。そして、四季折々変わりゆく箱根の自然や名所旧跡、宿などで、時には一人静寂に、時には家族、友人、仲間と賑やかに過ごす人たちを情緒あふれる映像で切り取っていく小田急ロマンスカーのCM。流れる美しい風景とどこか切なさが漂う歌詞に、遠い青春の甘酸っぱい記憶やいま抱いている大切な人への想いがキュンと胸に沁みて、思い出探し、自分探し、家族や友人の絆を深める旅に出てみようという気持ちになった方も多いことだろう。

 CMのスローガンは、「きょう、ロマンスカーで」。CM曲は、「ロマンスをもう一度」。このスローガンはもちろん、CM曲の作詞も手掛け、約50人ほどの現場スタッフの陣頭指揮を執っているのが、クリエイティブ・ディレクターの上野泰明さん(昭和27・1952年4月21日~)である。

1990年代のバブル崩壊後、箱根を訪れる観光客数は右肩下がりとなり、ロマンスカーの利用客も減少。箱根を再生させるための大きな柱の一つとして小田急電鉄株式会社グループ経営企画室(箱根統括会社設立準備室。現・小田急箱根ホールディングス株式会社)が策定したのが、「広告の力」であり、CMは平成14(2002)年夏から放映がスタートした。

 上野さんに依頼された課題は“ブランド広告”。

「ブランド広告には原則があって、一つはスローガン。もう一つは世界観を表現する映像。それと音楽。そのほかにその時、その時の共感を狙うキャッチフレーズ、つまりテーマです」。

ブランド広告は得意だという上野さんだが、箱根はほぼ初心者。さあ、どう創り上げていくか。上野さんがまず試みたのが、箱根に自分から入っていくことだった。

「制作のために滞在していた強羅環翠楼で、当時のご主人・鈴木英之助さんから箱根に関する本を何冊もお借りし、一晩で読み終わってお返ししたら、『君、すごいな』と。それから親交が始まり、いろいろなことで便宜が図ってくださった。僕の師匠、箱根の親みたいな人です。他にもいろいろな方にお世話になりました」。

「これまで多くの仕事を手がけましたが、ここまで続いて、ここまで人がや


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